洒落怖 パワーストーン】沖縄で拾ったパワーストーンにはまがまがしさを感じたけど相棒には言わなかったんだ.洒落怖動画

相棒がパワーストーンにはまった。

相棒というのは、一緒にオカルトを究めよう!

と誓い合った親友のことで、そいつはとても単純な性格をしていた。

決めたことは即実行なタイプで、俺にはない行動力を持っている。

パワーストーンにハマってるんだと聞かされたときも、すでに相棒は数種類もの石を持っていた。

「何でパワーストーンなんかにハマったんだ?」

「石はな奥が深いんだ。それぞれ、力を持ってる」

「……またなんか読んだのか」

「…雑誌に載ってたんだ。運気を呼ぶって」


相棒はどうやら、雑誌のパワーストーン特集とやらを見たらしい。

なんでも石には誕生石とか属性とかあるらしくて、相棒の場合はトルコ石・ラピスラズリという石らしい。

相棒は青っぽい石をいくつか出してその効果を説明した。

「この石が呼んでくれる運は、成功運なんだってよ。成功の象徴…俺に合ってるよな」

「へー。じゃあ俺は?」

「隊長は9月生まれだっけ?だったら…」

相棒は携帯でググッて俺の誕生石を調べる。

「サファイヤだ。象徴は、慈愛・誠実…」

「慈愛?誠実?紳士な俺にふさわしーじゃねえか」

「うぜー。でもサファイヤったら宝石じゃん。手に入らねーだろ」

「俺は別に要らないけど。ってか、そういやお前その石どうしたの」

「通販で買った」

「……あそ、」


相棒は、ムードとか雰囲気は一切関係なしのやつだった。

俺は、通販で買えるような石が運気を呼ぶ力を持っているとは到底思えなかった。

まぁ、本物の石ならどこで入手しようが効果は問題ないんだろうけど。

(最近ではガチャガチャでも売ってるよね)

そんな会話をしたあとからも、相棒のパワーストーン愛好ぶりは日に日に増していった。

誕生石から、勉強ができるようになる石、恋が成就する石、相棒の持つパワーストーンの数は十数個にまでなっていた。

パワーストーンは結構高値で、お小遣いで必死にやりくりしている。

俺には平気でボンボン買っていく相棒が信じられない。

(言い忘れてたけど相棒は金持ち)

そんなある日、相棒は今までの石とは違った感じの石を俺に見せてくれた。

「これ見ろよ」

「なんだ、この石。そのへんに落ちてそうな感じだな」

相棒が見せてくれた石は、パワーストーンというよりはただの砂利に埋もれてそうな石ころだった。

今まで以上にうらやましくないその石に、俺は首をかしげる。

「これもパワーストーンなのか?」

すると、相棒はとても嬉しそうに、その石の詳細を語った。

「これはなぁ。沖縄のある城跡から持ってきた石なんだよ」

「沖縄?ってか、やっぱりただの石かよ。それどうしたんだよ」

「姉ちゃんの彼氏がもともと沖縄の人でさ。二人で先週沖縄に行ってたみたいなんだよ。

それで、最近石にハマり気味の俺に姉ちゃんがお土産にーって。

沖縄の城跡って、写真で見たけどなんか石を積んで作った遺跡みたいなところなんだ。

その城跡の一部だぜ?すげーじゃん」

「確かに、そういうところの石は特別な力を持ってそうだけど」

俺は改めてその石を見直す。やっぱり、ただの小さな石だった。

「なんか俺、この石に惹かれる。ご利益がありそうじゃね?」

相棒はその石がとても気に入っているようだったから俺は何も言わなかったけど、本当は、その石から嫌な気配がしてならなかった。

説明できない、まがまがしさがある。

ご利益どころか、悪いことが起きそうな…そんな感じ。

そしてその会話交わしたその日の夕方、まさにその予感が的中してしまった。

相棒が、バイクにひかれたのだ。


その連絡はその日のうちに相棒自身からきて、命に問題はないらしく「足骨折しただけですんだ」と

電話で教えてくれた。俺はその連絡後すぐに原付で病院に向かった。

病院では、松葉杖の相棒と相棒のお姉ちゃんがいた。

「お前大丈夫かよ」

「おお。大丈夫なんだけど、痛すぎる」

「バイクにひかれたって、お前どんなドジ、」

「違うって、ドジはあっち!バイクの方!いきなり急カーブで俺にぶつかってきたの」

自分を弁護しつつ、事故の様子を語る相棒。完全にバイク側が悪いらしい。

「おかしいなー。こんだけパワーストーン持ってんのに事故るなんて」

「バッカじゃないの。パワーストーンなんかで身を守れたら警察は要らないんだよ!」

ポケットからパワーストーンを取り出して不思議そうにしている相棒の頭を、相棒のお姉ちゃんが殴る。

相棒のお姉ちゃんと会うのは二度目くらいだった。

ちょっと柄が悪そうだけど、とても美人な人だ。

「あたし、そういう石とか信じてないんだよね」

「いってー!怪我人なのに何するんだよ!彼氏と同棲してること父さんに言うぞ!」

「うるさい。あたしは仕事中なのにわざわざ迎えにきてあげたんだから感謝しなさい」

「だいたい信じてないって言いつつ、姉ちゃんだって俺にご利益の石持ってきてくれたじゃねーか」

「ご利益?」

相棒の言葉にお姉ちゃんはキョトンとした。

「違う違う。あれは記念だよ。悲劇の最期をとげた将軍の城の一部。

祟りがあるって噂でせっかくだからって持ってきたの。アンタこういう話好きじゃない」

「悲劇の最期?」

「祟り?」

相棒と俺はお姉ちゃんの言葉に食いつく。


「何、その城ってなんか因縁でもあるの?」

「因縁っていうか。たしか、その城のある地域一帯をしきっていた将軍が、別の地域を仕切っていた

将軍一派に責められて命を落としたんだったかなぁ。その責めてきた将軍は、殺された将軍の

身内だったって話。それ以来、その城の将軍の祟りがあるらしいよ」

俺たちは息をのんだ。何でその祟りがある城跡の一部を弟に持って帰ってくるんだこの人は。

「じゃあ、この石ってなんかご利益があるとかじゃないのかよ…」

相棒は、例の石を取り出しながらつぶやいた。お姉ちゃんは、ケロリと言う。

「どっちかって言うと、縁起悪いんじゃない。現にアンタ事故ったし。やっぱ祟りだよ」

その日から相棒は、パワーストーンを集めることをやめた。

パワーストーンへの興味を失ったわけじゃないらしいが、今ある石だけを大切にして身を守ってもらうらしい。

でも、石を集めなくなった代わりに相棒はパワーストーンの力を高まる方法などを調べるようになった。

たまに、月が出てる夜にベランダに石を出して光を浴びせてるところを見ることがある。


それと、例のあの「祟り城跡の石」は、相棒のお姉ちゃんが彼氏に相談して神社に捨てたらしい。

お姉ちゃんは、城跡の石を持って帰ったことを彼氏にも黙っていたらしく、相談したときとても怒られたらしい。

地元では、その城跡の石を持って帰ることは絶対の禁忌らしい。

それを聞いた相棒は、ものすごく真面目な顔で

「そんな気がしたんだよ。最初から、なんか恐ろしい気配を感じてたって言うか…」

なんて言っていた。俺は敢えて何もツッこまないで、お城の祟りについて考えていた。

十数個のパワーストーンの力にも打ち勝つ将軍の祟りは恐ろしいな、と思う。

「やっぱり、この世は不思議なことばっかだな」

「だから俺達が解明するんだろ」

「被害に合ってるだけだけどな」

俺たちはそう言い合って、笑った。

この話に出てくる城跡ってのは、ウィキペディアにも詳しく載ってる城跡と将軍だから心当たりがある人がいるかもしれない。

沖縄県K城跡と、その祟り?にあった相棒の話、おしまい。

俺と相棒と、それから宮田。この三人が、相棒姉の彼氏の実家、

沖縄県に行って沖縄独特の恐怖体験をすることになるのは、また別の話。