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洒落怖 相棒シリーズのカテゴリ記事一覧

ネットで語られる洒落にならない怖い話、いわゆる洒落怖な話を掲載しています。動画バージョンもあるので楽しんでください!

カテゴリ:洒落怖 相棒シリーズ

洒落怖 相棒シリーズ 「予知と言霊」



洒落怖動画

馬鹿は風邪ひかない。のに相棒が風邪をひいた

相棒というのは俺のオカルト道の相棒のこと。

制服が衣替えしたばっかの季節で、少し肌寒い日だった。

正直、学校が終わったらすぐにでも帰宅して部屋でゴロゴロしていたい心境だったけど、俺は電話にて

「ごはんも食べてなくて辛い。お見舞いにヨーグルト買ってきて」と、相棒に呼び出されてしまった。

「何で俺が」と、俺はそれを無視して帰宅しようと思ってたけど、一人暮らしのあいつには

看病をしてくれるやつがいないんだよなぁ、と思いなおす。

しばらく考えたが、優しい俺は仕方なく家に寄ってやることにした。


相棒の家のマンションは、オートロック式で入口の自動ドアに鍵を差し込む形になっている。

出会い当初、鍵が無いと家に来るのも不便だろ!

と相棒は俺にマンションの合鍵を作ってくれた。

別に鍵を持っていなくても、電話で部屋の住人に「開けて」と頼む方法や、

マンションの一階にいる管理人さんの信用を買って開けてもらうという方法があるので、

合鍵なんて別に要らないと思っていたけど、あればあるで本当に便利だ。

俺は10階建てマンションの4階にある相棒の家につくと、インターホンも押さず合鍵で中に入る。

中に入ると「辛い」と言って俺にヨーグルトまで買わせたくせに、思いのほかピンピンした相棒がリビングのソファで何かを見ていた。

「よお、遅かったな」

「なんだよ。お前元気じゃんか。来て損した」

俺は一気に疲れて買ってきたヨーグルトを冷蔵庫にしまった。

相棒はさっきから、何やら手帳のようなものを読んでいる。その目の前のテーブルには、食べかけのポテトチップスがあった。

「お前なんなの。ごはん食ってないんじゃなかったっけ?」

「ごはんはね。それより隊長。これちょっと見ろよ」

屁理屈ヤローめ。俺はちょっとイラっとしたけど、相棒が意味ありげな顔で手に持っていた手帳を俺に渡してきたので、とりあえずそれを読んでみた。

「なんだこれ、日記帳?でもないな。どっちかっていうとスケジュール帳か?」

「それ、十年分のスケジュール帳なんだ。俺のおばあちゃんの」

「なんでそんなものお前が持ってるんだよ。てゆうか、これが何」

「おばあちゃんの遺品なんだよ。仏壇にあった。

その一番最初のページ、年間タイトルってとこ見てみろ。」

相棒が指すページは、平成10年から20年までの10個の数字と、白い枠があるだけのページだった。

どうやら、10年間の1年1年にそれぞれタイトルや目標をつけよう!というページらしかった。

だけど、相棒のおばあちゃんはそこに、年間のタイトル、目標ではなく…

「年齢?」

「そう、その年のおばあちゃんの年齢」

そこには、平成10年[74歳]平成11年[75歳]というように、おばあちゃんの年齢が書かれていたのだ。

だけど、その年齢も平成14年で一度途絶え、平成15年から[1年][2年]と今度は年がプラスカウントされていくようになっていた。

「どーういう意味だ?」

俺はさっぱりちんぷんかんぷんだけど、相棒は「わかれよ~」と苛立ってるようだった。


「俺のおばあちゃん、平成14年に亡くなったんだ。享年78歳で。その年に丁度空白になってるだろ。

で、その次からの1年、2年ってのは回忌のことなんだよ」

「あ~、なるほど。そういうことか」

「それだけか?」

「何が、」

「気付かねーの?これ、書いたのはおばあちゃん自身なんだぜ?」

その言葉に、俺はちょっとゾクリとする。

そうか、これは、本人が書いたとなるとかなり妙な話だ。

「お前のおばあちゃん、自分の余命知ってたのか」

「そこに俺も驚いてるんだよ。おばあちゃんはこの年間タイトル欄を、買った年…平成9年に一気に

書いてるから、死ぬ5年近く前に自分の死ぬ年を知っていたってことになるんだ」

「何で平成9年に書いたって、わかるんだよ」

「このメモを書くのに使ってるペン、これ実は姉ちゃんのペンなんだ。紫のラメ入りペン」

相棒に言われてよく見てみると、それは確かにヤングな感じのキラキラした色のインクだった。

「俺、今でも覚えてるんだけどさ。昔、おばあちゃんに手帳書くからインクペンを貸してって言われたんだ。

でも俺まだ鉛筆しか持ってない年齢だったから、代わりにお姉ちゃんのペンを借りてきて渡したんだ。

それがこの紫色のラメペン。

おばあちゃんは可愛いペンだねって言いながら自分の部屋に持っていって、で、その日のうちに、これありがとうね。

ってこのペンを返された。俺はめんどいから姉ちゃんに返さないで自分の机に転がしといたけど。

それが、今思えば平成9 年だ。小学1年生だから、鉛筆しか持ってない。」

「つまり、このペンはずっとお前が持っていたから、違う年に同じペンで書くことは不可能ってことか」

「そういうことだ」

俺はまたゾクゾクした。5年も前に自分の死ぬ年齢をわかって、それをスケジュール帳に残すなんて、これはなんかの能力としか思えない。

「これ見つけたとき、俺おばあちゃんのことすげーって思ったんだ。

自分の死ぬ年がわかるなんてすげーじゃん。けどさ、これは自分の死を予知したんじゃなくて、

もしかしてこのスケジュール帳にネガティブな書き込みをしたせいで、言霊ってやつがおばあちゃんの生命力を奪ったんじゃねーかな…とも思っちゃってさ」

相棒はスケジュール帳をペラペラとめくりながら言う。俺はちょっとしんみりとしてしまった。

何故、相棒のおばあちゃんが自分の寿命を当て、それを書き残したのかはわからない。

だけど、もしも相棒の言うとおりこのスケジュール帳にこんなことを書いたせいで、

おばあちゃんの寿命等が記した通りの運命に変わってしまったとしたら…。

「ま、結局どっちかなんてわかんねーけど。どっちにしろ、オカルトだ」

変な空気での沈黙状態の中、相棒が言った。

確かに、相棒のおばあちゃんがすごいのか言霊なる力が働いたのか、どっちかはわからない。

だけど、どっちにしたってこれは不思議なことだと思う。

「そうだな!」

それから俺達は、買ってきたヨーグルトを食べた。

相棒は絶対仮病だと思ったのに、その日の夜高熱を出した。

すぐに帰るつもりでいた俺は、結局泊りで相棒の看病をするはめになる。

予断だが熱にうなされながら、「俺は治る、俺は治る。熱なんてない」とぶつぶつ呟く相棒の姿はかなり気持ち悪かった。

あとで聞くと、言霊の力を借りようとしたらしい。

そのおかげか知らないが、相棒の風邪はその日で完治していた。

「やっぱ言霊ってあるよな!」

「知らねーよ」

元気になった相棒は得意になって言う。俺はそっけなくしたけど、確実に言霊の存在を信じていた。

以前、超当たるという有名な占い使にが言っていたことを思い出した。

『どんなにすごい占い師も、その力で自分を占うことはしない。

世の中は、知りたくない未来のほうが、ずっとずっと多いからね』

洒落怖 相棒シリーズ 「ごめんなさい橋」



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ある時、相棒がオカルト活動に誘ってこなくなった。

普段から毎日恐怖スポットを探したり怖い話を人に聞いたりしているような熱狂的なオカルトマニアが、急にそれを口にしなくなるのは奇妙な何かがあった。

俺は一応オカルト道の相棒として、そのやる気のなさに注意をしてみた。

「おい相棒、お前最近どうしたんだ」

「なにが、」

「わかってるだろオカルト活動だよ。お前が目標を決めて、俺が評価して一緒に責める。

そうやってオカルト活動成り立ってるのに、お前今月に入ってからそういう話一切しないじゃんか」

「あーそっちか。ごめん、俺ちょっと今まいっててさ」

俺が文句を言っても、相棒はやる気を一切ださなかった。

こういう風に相棒がダラダラすることは実は普段からよくあることだった。

でも、そういう時相棒は小銭を4枚手の甲で振って見せて、

「ダメ。ツケが悪い」

とかぬかし言い訳をするくらいのやる気はあった。

だが今回はそういうやる気すらない。

なんだかいつもボーっとして、自分の顔を叩いたりためいきをついたりで気持ち悪かった。

俺はおかしいなと思った思ったけど、相棒にも相棒の事情があるんだろうとしばらくは相棒をそっとしておくことにした。

相棒がいなくても、オカルト活動はできるのだから。

そうして、俺は初めて相棒抜きで心霊スポットに突撃してみることにした。


相棒抜きでと言っても、別に一人で行動を起こすわけじゃなかった。

実は俺達には、オカルトマニアの仲間

(相棒はライバルと言ってるが)グループが複数いた。

意外なことにそういう活動をしてみると、そういう人たちにめぐりあう確率があがる。

類は友を呼ぶ、とはよく言ったものだとしみじみ思う。

そんなオカルト仲間グループのうち、最も年が近く仲がよかったのは俺達の通っている高校のすぐ近くにある男子校に通うひとつ上の人たちだった。

彼らは主に3人で活動をしていて、名前(というかあだ名?)が「松田さん」「美少年さん」「ダブ兄さん」と言った。

松田さんはそのまんま苗字で、美少年さんはびっくりするくらい美形

(ただし背も低く中学生に見える)なことからそういう呼ばれ方で、ダブ兄さんは高校を一回ダブってることからの呼び名らしい。

彼らとはよく心霊スポットでばったり会ったりするうちに仲良くなった。

(よく俺達のオカルトグッズを褒められる)

俺は相棒に何も言わないのは悪いと思ったが、ああいう状態だから仕方ないだろうと彼には秘密で松田さんたちと心霊スポットに行ってみることにした。

松田さんの連絡先は教えられて知っていたので、コンタクトを取るのは簡単だった。

電話をして松田さんに「今度どっか行く予定があったら、俺も連れていってください」と頼む。

電話口の松田さんは、顔は見えないけどとても驚いているのが声の調子でわかった。

「いいけど、お前ひとり?シンデレラは?(シンデレラとは相棒のこと。怖くなると灰塩をかぶることからの異名)」

「はい。相棒は今不調みたいで」

「ふーん。喧嘩とかじゃなく?」

「そういうんじゃないです。そういえば次の予定はいつどこに行くんです?」

「ならいいけど。次は来週の水曜日。次の日祝日で学校休みだからな。お前『ごめんなさい橋』ってわかるか?」

「知ってますよ。人柱を祀ることで立てることができた橋で、通るときはその人柱にごめんなさいって言わないと呪いにかかるっていう」

「そうそれ。その橋に行く」

「え、でもそれって。確かこの県じゃないですよね」

「んー。なんかそんなような橋は全国各地にあるらしくて、それがこの県にもたまたまあるって感じなんだ。

高速だったら1時間くらいでつけるから」

俺と相棒の場合、心霊スポットに行く時の交通手段は徒歩か電車、原付だったりであまり遠くには行けないが、
松田さんたちの場合はダブ兄さんが車の免許を持っているので遠くのスポットまで行ったりしていた。

「そうなんですか。楽しみにしときます」

「じゃあ、水曜日の夜8時にお前の高校まで迎えに行くよ」

「ありがとうございます。また来週」

俺は珍しく遠くに、しかも松田さんたちと心霊スポットに行けるということにわくわくしていた。

すごい体験をしてきて、相棒に聞かせてやろう。

そしたらあいつも元に戻るだろう…と気合を入れる。


そして、水曜日になった。

「こんばんは」

俺は学校の前まできてくれた松田さんたちに挨拶をした。

運転席のダブ兄さんは前に会ったときよりもさらに老けてる気がする。

「今日は美少年の彼女もいるんだよ」

「え、彼女!?」

俺はあわてて乗用車の中を覗き込む。そこには美少年さんにお似合いなすごい美女がニコニコして座っていた。

「はじめまして。よろしく、G商くん」

「よろしくです」

G商というのは、俺の通っている高校の名前だ。

もともとが女子高だったので、9割を女子がしめた商業高校。

そのせいか、G商通う男子は無条件に他校から『G商くん」と呼ばれることが多い。

彼女さんもそれらしかった。

「よし、そろったし。出発するか」

ダブ兄さんはそう言って車を走らせた。車内では彼女さんの自己紹介がはじまる。


「スズキって名前なの苗字じゃないわよ。名前がスズキ。ベルの鈴に季節のキを書くんだ」

「へー、かわいい名前ですね」

美少年さんは普段から無口だけど、スズキさんがいても変わらなかった。

運転中のダブ兄さんと助手席の松田さんは二人だけでなにやら盛り上がっていて、後ろの席に座る三人で美少年さんがあまりにもしゃべらないので、スズキさんと俺ばかりが話をしていた。

「G商くんは怖いとこ好きなの?」

「はい。怖いとこの雰囲気が好きです。怖い雰囲気が好きだけど怖いのはやっぱ怖いからあとで後悔するタイプ」

「あーダブ兄と一緒だね。でも懲りずに何度もスポット行っちゃうんでしょ」

「そうなんですよ。俺の相棒もそういうタイプで」

「あー、噂のシンデレラ君ね。じゃあ二人して怖がってるんだ」

スズキさんはケラケラとよく笑った。

美少年さんとは対照的にとてもおしゃべりな人で、自分のことをよく話す。

何でも、美少年さんよりも3つ上で地元の大学に通っているらしい。美少年さんとは幼なじみとのこと。

怖いものが無いらしく、オカルト活動をしていても怖いと思ったことは一度もないらしい。

「美少年さんと一緒ですね」

俺は敢えて無口な美少年さんに話を振ってみた。

美少年さんは松田さんやダブ兄さんよりもオカルトが好きで、中学の時からひとりであちこち(他県でも)見に行ってると聞いたことがある。

「あー。でも、スズキと俺じゃちげーんだわ」

俺に話をふられた美少年さんは、顔の割に低い声でだるそうに言った。

何がどうちげーのかはわからなかった俺はきょとんとしてしまった。

「それって、どういう意味です?」

「G商くん、気にしないで。フジ(美少年さんの苗字は藤原)の発言は説明されても意味不明だから」

俺が詳細を訊ねると、美少年さんの隣からスズキさんがそれを止めた。

なんか変な空気になって、しばらくの間シーンとしてしまったけど前から松田さんが「そろそろ着くぞ」と言ったのでその沈黙はなくなった。

「おお、いよいよか」

俺は窓の外を見てみた。暗くてよく見えないけど山の奥に来ているということはわかった。

道がちゃんとしている山で、車で入っていける。

「ここは、T滝(所在地がバレちゃうのでぼかします)の近くなんだ」

窓の外を見る俺に、美少年さんは言った。

T滝という場所は、県内に複数ある滝の中でもひときわ小さい滝で、すごい山奥にあるので地元の人しか知らないような滝だった。

俺は子供の頃親と来たことがあって知っているけど。

「じゃあ、ごめんなさい橋ってのはT滝にかかってるやつですか」

「橋が2本あるじゃん。大きい方じゃなくて小さい方。そっちがごめんなさい橋」

口ぶりからして、美少年さんはそのごめんなさい橋に行ったことがあるようだった。

でも、俺の記憶には遠い昔だからかもしれないけど、滝の川に架かる橋は大きい橋一本しかなかった。

(大きいか小さいかだったら大きい)

「ついたらわかるよ」

松田さんがそういうので、俺達一行はとりあえず車を降りて橋に向かってみることにした。

夜だからか山だからか、それとも心霊スポットが近いからか…なんだかとても肌寒かった。


滝の川や山は、昼間に見るよりものすごく怖い雰囲気を漂わせていた。

なんか、心霊スポットじゃなくても幽霊とかバンバン出そうな感じ。

5人の中で、俺とダブ兄さんだけがビクビクしながら歩いていた。

「そんなに怖がらなくても、何かでてもこんなに人がいたら大丈夫じゃん」

情けないが、俺はスズキさんにそんな感じで励まされてしまっていた。

そんなこと言っても、何人いよーとその場所の雰囲気は半端なく怖かった。

「ここだよ。この橋」

いつの間にか先頭を美少年さんが歩いていて、美少年さんは川のない場所で立ち止まって言った。

「え、ここって…川なんてないじゃないですか」

俺はオカルトグッズの内の一つ、ペンダント式ライトで辺りを見回した。

すっかり山奥って感じで崖はあれど川なんてどこにもなく、ましてや橋なんてどこにも見当たらなかった。

その崖さえも策でふさがれてる。

俺が川や橋をキョロキョロ探していると、松田さんはでっかい懐中電灯で前を照らして言った。

「川にかかる橋じゃない。崖と崖をつなぐ橋だ」

すると、今までは見えなかったが策の向こうの崖には、木でできた古い橋が架かっていた。

「これがっ…ごめんなさい橋」

俺は絶句してしまった。

小さい頃に見た記憶がないはずだ。T滝の川にかかってるのではなくその山奥の崖と崖のかけ橋だったんだから。

しかも、T滝に架かっていた橋よりずっと古く脆そうだ。

しかも道幅が狭く手すりがない。橋というより板が架かっているという感じだ。

「この橋に出るという女の霊は、他のごめんなさい橋の話のように人柱で死んだ女の霊じゃない」

普段は超無口なくせに、こういうところに来ると水を得た魚のように口を開きだす美少年さん。

何もこんな場所で言わなくてもいいのに、美少年さんはその橋を目の前にしてこの橋にまつわる怖い話をした。


「この橋はとても古い。昔この崖の向こう側に住んでいた人たちがT滝に来やすいように作った橋だから。

でも、今から話す女の話はここ10年の間に起こった比較的新しい話になる。それがごめんなさい橋の真実」

ごくり、と生唾を飲む俺。美少年さん以外はもう誰も口を開いていなかった。

「昔、一人の女がナンパしてきた男たちと酒を飲んだ。

いい感じの青年たちだったから気を許したのか、その女はべろべろに酔っ払った後も男たちの車に乗ってついてきてしまった。

でも、彼女が気を許したその男達はいい感じの青年でも何でもなくて、ただのタチの悪いチンピラ達だった。

男達は酔っ払った女をこの山奥まで連れてきて、彼女の携帯電話を奪った。

そして携帯電話を崖の下に捨て、この山に女を置き去りにしてしまった」

何故かサーっと全身に鳥肌が立った。心霊チックな場所でされる人間的怖い話はなんとも不気味で仕方ない。

「酔っていてここがどこなのかわからない女でも、この山の暗闇にはパニックになった。

男達は車で立ち去ってしまい、携帯電話も捨てられてしまった彼女には目の前の闇が恐怖でしかなかった。

今でこそ崖の前に策があるから、暗くても崖の存在に気づくけど少し前までこの崖はむき出しだった。

とにかく明るいところに行きたい、と、酔った状態…しかもパニック状態でこの細い橋をズンズン進んだ女は、そのまま…」

美少年さんはそこで話をやめた。その代わり親指を立ててその指ゆっくり下に向けた。

きっと、「落ちた」という描写だ。

「それ以来、この橋には女の幽霊が出るんだよ」

完全に恐怖で縮こまっている俺に、松田さんが電灯を当てて言った。

こんな場所でこんな話をしていても、松田さんはいつもと変わらず呑気に微笑んでいた。

その隣では一番年長のダブ兄さんが俺なみにビビっている。

「どんな幽霊が、出るんですか」

「…顔がグチャグチャの女が、この橋をゆらゆら渡っているらしいよ」

「グチャグチャ…?」

「この崖から落ちたんだ。そりゃグチャグチャも納得だね」

俺はもうその橋が見れなかった。もし、女が橋を渡っていたらどうしよう…。そんな想像が頭から離れない。

「じゃあ何でこの橋、ごめんなさい橋なの」

不意にスズキさんが言った。そう言えばそうだ。

何故、この橋がごめんなさい橋なんだろう。

よくあるごめんなさい橋の話では、人柱になってくれた人にごめんなさいと言わなければいけないから、

その名前で呼ばれる。だけどこの橋は違う。


俺とスズキさんが首をかしげていると、また美少年さんが口を開いた。

「女をこの橋に置いて行った男たちはその後…。彼女がこの崖で死んだことを知ったあとかな、みんな精神的に発狂しちゃったんだ。

一人の男をのぞいて。その一人の男ってのが、この橋の名づけ親。

そいつは女が死んだことを知ると、自分たちの悪戯がとんでもないことになった…って怖くなってこの橋にきた

そして、死んだ女に花を供え、手を合わせた。そして橋にごめんなさいとペンで書いていった。ほら、見ろ」

美少年さんは電灯を橋に当てた。

光のさす先には、確かにマジックで「ごめんナさい(何故かナだけカタカナ)」

と書かれていた。雨とかのせいだろうけど、字はとても薄くなっていて古びていた。

その文字を見て、俺とダブ兄さんは手をつないで震えた。

「ちゃんと手を合わせに来たのはその男だけらしく、だからその男だけは発狂しなかったんじゃないかと言われてる。

発狂した男たちはみんな一様に『女が』と言っていたらしい。

そのことから、この橋を渡るとき、またはこの橋に来たときは心の中で『ごめんなさい』と言わなければいけない。

そこまでがこの橋にまつわる怖い話」

「その女の人、かわいそう…」

美少年さんが話をしめると、スズキさんは小さく呟いた。

ちっとも怖がっている様子は見せないで、ただただ話の女の人に同情しているようだ。

俺は怖いと思ってしまうなんて不謹慎だったかな…なんて思ってしまう。

「スズキさん…「だから…」

俺は「優しいですね、」と声をかけるつもりでスズキさんの名前を呼んだ。

だけど、その声は同時に喋ったスズキさんの声によってかき消された。



「だから、そんな悲しそうにこっちを見てるんだ」


「!?」
「!」


今 な ん て ・ ・ ・

俺は心臓がキュッとなるのを感じた。

どう言ったらいいのかわからないけど、バスを降りたときとかに誰かから「あれ?カバンは?」と言われたときのような、ヒヤっとした感じ。そんな風に、心臓がトクトクした。

「スズキ、見えるのか」

唯一、スズキさんの発言に表情を変えなかった美少年さんがスズキさんに聞いた。

スズキさんはコクンと頷き声色を変えないで淡々と答えた。

「だって、こっち側にゆっくり渡って来てるもん」

その一言で、俺とダブ兄さん、さすがの松田さんも、もう無理だった。

来た道を無我夢中で走り、車へと戻った。

松田さんの照らす懐中電灯の光に向かって走り、俺とダブ兄さんは気持ち悪いことに手をつないだまま走った。

やっとこさ車についたとき、ダブ兄さんは慌てて車のエンジンをつけて音楽を流した。

3人とも、何もしゃべらずに、あのカップルが戻ってくるのを待った。

その間俺の頭の中ではずっと、顔がグチャグチャな女の人がさっき見た超雰囲気のある橋を渡ってきてる映像がリアルに流れていた。

しばらくすると、二人が戻ってきた。

結構時間がかかっていたから、二人は俺達みたいに走ったりせず、冷静に歩いて戻ってきたんだろう。

「いきなり走るなよな」

戻ってくるなり美少年さんは松田さんに文句を言った。

大きい懐中電灯を持った松田さんが走り去ってしまった為、二人は携帯のライトだけを頼りに戻ってきたのだという。

俺は本当にこの二人は心臓に毛が生えてるんじゃないかと疑った。

美少年さんたちも戻ってきたので、ダブ兄さんはすぐに車を発進させた。

しばらく走って高速に出たとき、やっと俺達ビビリ組はしゃべれるようになっていた。

「なあスズキ。お前本当に見たのか」

松田さんは助手席から後ろの席を振り返って言った。

スズキさんは相変わらず綺麗な顔でニコニコ笑い、頷く。

「フジが女の人の話しだした時ぐらいからかな~。橋を見てたらね、いつの間にか女の人の形をした光が見えたの。

で、私そういうの結構見るから、ああ。彼女だ…って思ってずっと見てたわけ。

そしたらその女のひとの顔とかが鮮明に見えてきて、彼女と目が合ったの。そしたらその女のひと、ゆっくりゆっくり私たちの方に歩いてきたんだ」

俺は再び例の想像をしてしまい、怖くなった。

きっと、暗闇の中人間を見つけて、助けを求めて歩いてきてたんだろう。

怖いけど、やっぱり可哀想だとも思った。

俺はそのあと、その女のひとが無事渡って来れたのかが気になって、スズキさんに訊いてみた。

「結局、その人はこっち側に渡ってこれたんですか」

すると、スズキさんは俺に顔を向けて、大きい目を俺と合わせた。そして悲しそうな顔で首を横にふる。

「んーん。あとちょっとってところで…


落ちた」

 俺は、この世にはやっぱり不思議なことがあるんだと悟った。

それはハリーポッターみたいなワクワクするような魔法の物語とかじゃなくて、この世のあの世の境目の、悲しい物語。漫画やテレビの世界だけじゃなくて、現実に。

その後無事家まで送ってもらった俺は、その日怖くてリビングで寝た。

リビングならテレビがあったので、つけっぱなしでネタ。

時刻はもう、日付が変わっちゃっていた。


次の日俺は、このすごい体験を(自分は見たわけじゃないけど)相棒に聞かせるために相棒の家に行った。

電話で「家にいるよ」と聞いていたので、相棒の家に合鍵で入り相棒の部屋に行く。

相棒は相変わらずボーっとしていて俺が昨日の体験を語っても、「すげーな、オカルトだ」と棒読み気味に言うだけで期待していたリアクションを得ることはできなかった。

本当にどうしちゃったんだよ、と俺は心配になり相棒に問い詰めてみた。

「なんだよ、お前どうしちゃったの。何で最近、ぼーっとしてるんだよ」

「いや、今のボーっは、お前が俺に内緒で他のやつとオカルト活動してたことに対するボーっだから」

「…それはお前がボーっとしてたせいだろ」

「会話にボーッが多すぎてよくわかんなくなってきた」

相棒はそう言ってちょっと笑うと、ちょっとやる気のある顔つきになり昨日の話の詳細を聞いてきた。

「その美少年の彼女すげーな。本当の霊能力者か」

「そうそう。しかも、全然怖がんねーの。顔は超美人なんだけどよ。

名前も変わってるし。苗字じゃなくて名前がスズキって言うんだぜ」

俺はまだ会ったことがないであろうスズキさんについて、相棒に語った。

すると、相棒は心底驚いたような顔で俺の肩をつかんできた。

「おい、すずきって、高田スズキか」

「は。いや…苗字は知らねーけど」

「年は、20か21だろ」

「え。あー確かそうだな。美少年さんの3つ上」

「…O大学(ぼかします)に、通ってるだろ」

「そうそう!…何で知ってんの」

「マジかよ~」

俺は本気で意味がわからず混乱した。相棒だけが一人「あー!」と暴れる。

「もー、何でこーなるんだよ」

「何、説明しろよ」

「高田スズキ。スズキさんな、姉ちゃんの友達なんだよ」

「は!?マジ!?」

俺は驚いて食べていたじゃがりこを硬いまま飲み込んでしまった。世界は狭いな、と思う。


「マジ。こないだ、姉ちゃんが家に帰ってきたとき、一緒にいたんだ。おしゃべりな人で、

俺に色々話しかけてくれてさ…。あー、マジかよ。彼氏いたのかよ。しかも美少年…」

おしゃべりな人…というあたり、確かにあのスズキさんだろう。でも、何でこんなに落ち込むんだ。

「お前まさか、スズキさんのこと」

「タイプだったんだよ~!」

相棒は思いがけない失恋にその後も暴れた。

なるほど、だから最近ボーっとしていたのか。

「好きな女ができたからってオカルト活動がおろそかになるなんて、相棒失格だボケ」

「うるせーよ。お前にはわからねーよ。一目ぼれした女に彼氏がいて、しかもその彼氏がチビで、

しかもしかもオカルト好きという共通の趣味があったという真実を知ってしまった俺の気持ちなんて」

相棒はしばらくそんな感じだった。

俺はチビにチビといわれた美少年さんのことを哀れにおもった

それから、クールな美少年さんと真逆の相棒にも哀れむ。

それからしばらくして、相棒はまたいつもの調子に戻った。

前みたいに心霊スポットを探したりするのに熱心になった。

俺はほっとして、松田さんたちともいいけどやっぱ一緒に行動するのはコイツがいいな、と思ってしまった。

俺の(正確には同行した人の)すごい体験と相棒の失恋話終わり。

洒落怖 相棒シリーズ 「パワーストーン」



洒落怖 パワーストーン】沖縄で拾ったパワーストーンにはまがまがしさを感じたけど相棒には言わなかったんだ.洒落怖動画

相棒がパワーストーンにはまった。

相棒というのは、一緒にオカルトを究めよう!

と誓い合った親友のことで、そいつはとても単純な性格をしていた。

決めたことは即実行なタイプで、俺にはない行動力を持っている。

パワーストーンにハマってるんだと聞かされたときも、すでに相棒は数種類もの石を持っていた。

「何でパワーストーンなんかにハマったんだ?」

「石はな奥が深いんだ。それぞれ、力を持ってる」

「……またなんか読んだのか」

「…雑誌に載ってたんだ。運気を呼ぶって」


相棒はどうやら、雑誌のパワーストーン特集とやらを見たらしい。

なんでも石には誕生石とか属性とかあるらしくて、相棒の場合はトルコ石・ラピスラズリという石らしい。

相棒は青っぽい石をいくつか出してその効果を説明した。

「この石が呼んでくれる運は、成功運なんだってよ。成功の象徴…俺に合ってるよな」

「へー。じゃあ俺は?」

「隊長は9月生まれだっけ?だったら…」

相棒は携帯でググッて俺の誕生石を調べる。

「サファイヤだ。象徴は、慈愛・誠実…」

「慈愛?誠実?紳士な俺にふさわしーじゃねえか」

「うぜー。でもサファイヤったら宝石じゃん。手に入らねーだろ」

「俺は別に要らないけど。ってか、そういやお前その石どうしたの」

「通販で買った」

「……あそ、」


相棒は、ムードとか雰囲気は一切関係なしのやつだった。

俺は、通販で買えるような石が運気を呼ぶ力を持っているとは到底思えなかった。

まぁ、本物の石ならどこで入手しようが効果は問題ないんだろうけど。

(最近ではガチャガチャでも売ってるよね)

そんな会話をしたあとからも、相棒のパワーストーン愛好ぶりは日に日に増していった。

誕生石から、勉強ができるようになる石、恋が成就する石、相棒の持つパワーストーンの数は十数個にまでなっていた。

パワーストーンは結構高値で、お小遣いで必死にやりくりしている。

俺には平気でボンボン買っていく相棒が信じられない。

(言い忘れてたけど相棒は金持ち)

そんなある日、相棒は今までの石とは違った感じの石を俺に見せてくれた。

「これ見ろよ」

「なんだ、この石。そのへんに落ちてそうな感じだな」

相棒が見せてくれた石は、パワーストーンというよりはただの砂利に埋もれてそうな石ころだった。

今まで以上にうらやましくないその石に、俺は首をかしげる。

「これもパワーストーンなのか?」

すると、相棒はとても嬉しそうに、その石の詳細を語った。

「これはなぁ。沖縄のある城跡から持ってきた石なんだよ」

「沖縄?ってか、やっぱりただの石かよ。それどうしたんだよ」

「姉ちゃんの彼氏がもともと沖縄の人でさ。二人で先週沖縄に行ってたみたいなんだよ。

それで、最近石にハマり気味の俺に姉ちゃんがお土産にーって。

沖縄の城跡って、写真で見たけどなんか石を積んで作った遺跡みたいなところなんだ。

その城跡の一部だぜ?すげーじゃん」

「確かに、そういうところの石は特別な力を持ってそうだけど」

俺は改めてその石を見直す。やっぱり、ただの小さな石だった。

「なんか俺、この石に惹かれる。ご利益がありそうじゃね?」

相棒はその石がとても気に入っているようだったから俺は何も言わなかったけど、本当は、その石から嫌な気配がしてならなかった。

説明できない、まがまがしさがある。

ご利益どころか、悪いことが起きそうな…そんな感じ。

そしてその会話交わしたその日の夕方、まさにその予感が的中してしまった。

相棒が、バイクにひかれたのだ。


その連絡はその日のうちに相棒自身からきて、命に問題はないらしく「足骨折しただけですんだ」と

電話で教えてくれた。俺はその連絡後すぐに原付で病院に向かった。

病院では、松葉杖の相棒と相棒のお姉ちゃんがいた。

「お前大丈夫かよ」

「おお。大丈夫なんだけど、痛すぎる」

「バイクにひかれたって、お前どんなドジ、」

「違うって、ドジはあっち!バイクの方!いきなり急カーブで俺にぶつかってきたの」

自分を弁護しつつ、事故の様子を語る相棒。完全にバイク側が悪いらしい。

「おかしいなー。こんだけパワーストーン持ってんのに事故るなんて」

「バッカじゃないの。パワーストーンなんかで身を守れたら警察は要らないんだよ!」

ポケットからパワーストーンを取り出して不思議そうにしている相棒の頭を、相棒のお姉ちゃんが殴る。

相棒のお姉ちゃんと会うのは二度目くらいだった。

ちょっと柄が悪そうだけど、とても美人な人だ。

「あたし、そういう石とか信じてないんだよね」

「いってー!怪我人なのに何するんだよ!彼氏と同棲してること父さんに言うぞ!」

「うるさい。あたしは仕事中なのにわざわざ迎えにきてあげたんだから感謝しなさい」

「だいたい信じてないって言いつつ、姉ちゃんだって俺にご利益の石持ってきてくれたじゃねーか」

「ご利益?」

相棒の言葉にお姉ちゃんはキョトンとした。

「違う違う。あれは記念だよ。悲劇の最期をとげた将軍の城の一部。

祟りがあるって噂でせっかくだからって持ってきたの。アンタこういう話好きじゃない」

「悲劇の最期?」

「祟り?」

相棒と俺はお姉ちゃんの言葉に食いつく。


「何、その城ってなんか因縁でもあるの?」

「因縁っていうか。たしか、その城のある地域一帯をしきっていた将軍が、別の地域を仕切っていた

将軍一派に責められて命を落としたんだったかなぁ。その責めてきた将軍は、殺された将軍の

身内だったって話。それ以来、その城の将軍の祟りがあるらしいよ」

俺たちは息をのんだ。何でその祟りがある城跡の一部を弟に持って帰ってくるんだこの人は。

「じゃあ、この石ってなんかご利益があるとかじゃないのかよ…」

相棒は、例の石を取り出しながらつぶやいた。お姉ちゃんは、ケロリと言う。

「どっちかって言うと、縁起悪いんじゃない。現にアンタ事故ったし。やっぱ祟りだよ」

その日から相棒は、パワーストーンを集めることをやめた。

パワーストーンへの興味を失ったわけじゃないらしいが、今ある石だけを大切にして身を守ってもらうらしい。

でも、石を集めなくなった代わりに相棒はパワーストーンの力を高まる方法などを調べるようになった。

たまに、月が出てる夜にベランダに石を出して光を浴びせてるところを見ることがある。


それと、例のあの「祟り城跡の石」は、相棒のお姉ちゃんが彼氏に相談して神社に捨てたらしい。

お姉ちゃんは、城跡の石を持って帰ったことを彼氏にも黙っていたらしく、相談したときとても怒られたらしい。

地元では、その城跡の石を持って帰ることは絶対の禁忌らしい。

それを聞いた相棒は、ものすごく真面目な顔で

「そんな気がしたんだよ。最初から、なんか恐ろしい気配を感じてたって言うか…」

なんて言っていた。俺は敢えて何もツッこまないで、お城の祟りについて考えていた。

十数個のパワーストーンの力にも打ち勝つ将軍の祟りは恐ろしいな、と思う。

「やっぱり、この世は不思議なことばっかだな」

「だから俺達が解明するんだろ」

「被害に合ってるだけだけどな」

俺たちはそう言い合って、笑った。

この話に出てくる城跡ってのは、ウィキペディアにも詳しく載ってる城跡と将軍だから心当たりがある人がいるかもしれない。

沖縄県K城跡と、その祟り?にあった相棒の話、おしまい。

俺と相棒と、それから宮田。この三人が、相棒姉の彼氏の実家、

沖縄県に行って沖縄独特の恐怖体験をすることになるのは、また別の話。
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